昨年の秋ぐらいから特に身の回りでも「メタバース」とか「web3(ウェブスリー)」とかって言葉をよく耳にするようになりました。その上、年末には猫も杓子も「NFT」。頭が混乱して理解できていないかったので、このお正月休みに、自分なりに整理してみることにしました。

なお、まだいろんな人がいろんなことを言っている状態なので、それら色々見た上での、個人的な解釈という点はご了承ください。あくまで自分の整理のために、2022年1月時点の理解・解釈を記録しておこうと思います。

まずはメタバースから

まずは比較的理解しやすいメタバースから。Facebook改metaがやろうとしていることをザッカーバーグが説明しているビデオがとても分かりやすかったので、一旦、このmeta社の定義をメタバースだと、理解を揃えてしまうのがよいと思います。

Meta Connect 2021(2021/10/29)でのビデオです。

具体的に実現したい世界観がわかりやすく説明がされていると思います。インターネットを使って人々がやりとり(CONNECT)できるコンテンツやインタラクションが、テキストからビデオ、2Dから3D、視覚からマルチモーダルへと、よりリッチになり、体験が良くなるよ/良くするよということかと思います。ここ自体は誰しもが共感する部分だとは思いますし、meta社だけでなく、いくつものテクノロジー企業がそれを支える技術の開発にしのぎを削っていると思います。

Keyとなると体験として挙げていたのは以下でしょうか。

  • Presence
  • Avatars
  • Home space
  • Teleporting
  • Interoperability
  • Privacy and safety
  • Virtual goods
  • Natural interfaces

また、もう一歩、要素技術に分解していくと、こんな感じかなと思いました。

  • VR/AR/MR
    • ディスプレイ
    • ロボット
    • イメージングとそれ以外も含む5感を含むセンシング
  • データ分析・AI・デジタルコンテンツ生成
  • 3Dエンジン含む開発環境
  • 通信技術・伝送技術

さらに(FacebookがPlatformerとして叩かれているタイミングだったからかもしれませんが、、)大事なポイントとしては、この世界感は自社だけで作るものではないよ、そしてユーザーのプライバシーを尊重するよ、というメッセージが特に大事だったと思いますし印象的でした。InteropとPrivacy/Safeyが大事で、Day-OneからBuilt-inだと。またVRに限らずAR/MRも視野にというのは大事と思いました。

In order to unlock the potential of the metaverse there needs to be interoperability.

Privacy and safety need to be built into the metaverse from day one.

また、今後「メタバース」に発展しそうな「場=仮想現実空間」を提供し始めているような事例も、多くでてきています。もちろん上記の "Interop and Privacy/Safey built-in from Day-One" ではないですが。

例えば、

などです。これらを見てわかるように、もともとはゲームを中心とした仮想空間を中心にその場をもっと広い用途で使おうとしているものが多そうです。metaのhorizonはもう少し「遊び」ではなく「仕事」から攻めている感じでしょうか。これらのどこかが「デファクト」を取っていくのが、容易に想像できる未来、かもしれません。Facebookがソーシャルネットワークとそのビジネス利用でデファクトをとったように。

関連する記事をいくつか上げると、、

「メタバース」の価値を感じられる体験談.こういうライブに早く参加してみたい!

「メタバース」上で提供できる体験の幅が広がり、ビジネスも広がりそうという話

この対談記事も分かりやすかったです

メタバースの経済圏とは?

可処分時間という言葉がありますが、どんな人間でも平等に与えられているのが時間です。仕事をするにも、遊びをするにも、限られた時間をどこで・何に費やすか、がその場の価値に大きく影響します。つまり「メタバース」での体験がすばらしくなり、そこで過ごす時間が長くなれば、そこでの経済活動(モノなど売買や所有)の価値もあがるという具合です。

コロナ渦でリモートワークが一般的になり、自宅の机やPC環境に投資をしたのは、まさに自宅の仕事環境の価値が高くなったからです。同様に、10万円以上するスマホも毎日使うからこそ値段相応の価値を十分持ちます。接触時間が長く、そしてその体験が良ければペイすると考えるわけです。わたしは Z世代 では有りませんが、ソーシャルゲームNativeな若者がフォートナイトで自分を着飾るアイテムにお金を払う、というのも似たことなのかもしれません。そのアイテムと(友達と一緒に?)触れる時間が長いから価値が高い。わたしは、どうしても仮想空間内のアイテムやデジタルコンテンツは、フィジカルなものよりも価値が低いと思ってしまうのですが、それは間違っているかもしれないのです。

ただし、その価値をより高めるためには、そのアイテムをよりいろいろな「場」で使えることが大切になります。例えばフォートナイトで買った帽子が、VRChatやMeta Horizonで使えるとしたら、もう少しお金を払ってもいいと思えますよね? もっといえば、CDを買うとmp3がついてくるように自分が買ったものはいろいろな場で楽しめるべき、というのは(現在は技術的にできていないだけで)当然とも思えてきます。

つまりその考え方がザッカーバーグの言っていた「Interoperability」が大切という点です。metaで買ったものが、フォートナイトでもRobloxでもVRChatでも使えるようにすることで、メタバース内のモノ(アセット・資産)の経済価値があがるよ、ということと思います。(結果としてそこでの経済活動が増えてmetaが儲かる。ですね) むしろ、楽天市場で買った服を来て街に行けるように、フィジカルな現実社会では実現していることで、これをメタバースでも実現したいよね、というわけです。

で、ここでもう一つのトレンドと合流します。web3という価値観と、Blockchainという技術です。

web3 と Blockchain (と THE INTERNET)

ここまでの話と、web3ってというところを理解するのにはこの図がわかりやすく、本質的にとらえていると思いました。そうまさにweb3は「宗教」であり「思想」であり、中央集権とは対立する「分散」「民主」を支える一つの要素技術が Blockchain なのです 笑

OFF Topic の宮武さんのTweetより


スレッド全体はこちらから。

Benedict Evansさんの毎年恒例のテック業界のマクロトレンド ( @tmiyatake1 さんの訳)


3/ Web3は次世代インターネット

Web 1.0では企業がコンテンツ制作してお金儲けして、Web 2.0はユーザーがコンテンツ制作してネットワークがコントロールしてお金儲けして、Web3ではユーザーがコンテンツ制作してユーザーがネットワークをコントロールしてお金儲けする。

5/ テック業界の宗教的なビジョン

・クローズドで集権型 → オープンで分散型

・会社がお金儲けする → ユーザーがお金儲けする

・昔の課題と変わらず → 昔の課題を新しい風に表現

このビジョンを見ると、まさに「メタバースの明るい未来像」につながると思います。つまり、メタバースを支え得る技術としてweb3が脚光を浴びているというわけなのです。そして、

2/ リブランディング

・クリプト(決済、投資)→ Web3(インターネット事業・ネットワーク・ソフトウェアの新しいモデル)

・VR/AR(ゲームヘッドセット、ニッチなツール)→ メタバース(スマホの次のプラットフォーム)

とあるように、web3とメタバースは単なるリブランドでしかなく、前に見た夢、でもあります。

ちなみにさらにそれを支える技術・インフラはTHE INTERNETだろうと思います。webはそのインフラの上にブラウザ技術なども含めて構築された、エコシステム(アプリケーション)と捉えています。web3で新たなエコシステムを築けるのではという期待がこのリブランドの背景にはありそうです。

また、web3の「理念」をわかりやすく示しているビデオがありました。仮想通貨やNFTをしまっておけるブラウザ用のワレットを提供しているMetaMaskの紹介ビデオです。「BigTechに支配されない」世界観です。

Blockchain + スマートコントラクト = 分散アプリケーション/分散サービス

これらを実現するための、大きな要素技術の一つが、Blockchainです。雲行きが怪しく、どんどんお金の匂いがしてきます...

「分散は正義」であるという宗教観のもと、Blockchainを使って様々なアプリケーションが考案されているようです。どうもそのきっかけになったのが「スマートコントラクト」という仕組みのようです。Blockchainで資産の台帳管理と合わせて、取引の際の「契約」を定義しておくことで、取引に応じて「処理」を機械的に実行でき、その処理を工夫することで金融やNFTやゲームといったアプリケーションが実現できるというわけです。このスマートコントラクトを考案したのがEthereumのVitalik Buterinさんで、Ethereumという名前をビットコインに続いてよく耳にするのはこういう理由のようです。Ethereumはこういった仕組みやAPIをOpen Sourceとして公開していて、同じ仕組みが他のBlockchainに実装されたり、相互互換性を持ったりしているようです。これはいい理念ですね。

スマートコントラクトとは?仕組みと事例からわかる仮想通貨との関係

スマートコントラクトを使ったアプリケーションは取引相手同士、もしくはそのBlockchainのネットワークに参画しているユーザーのリソース(計算資源)を使って運用できるP2Pのおばけのようなものなので、サービス提供者なしでもサービスが提供し続けられそうです。

DAppsでゲームまでできるってホント?

なんだか信じられない気もしますね。。。気になったのでDApps(GameFi)がどうなっているか見てみました。

イーサエモン (Etheremon) とは?始める準備から遊び方まで徹底解説

これを見ると、つまるところ、Blockchainを使って「アイテム」を管理し、それをやりとりするゲームというように見えました。(さらにやりとりのモチベーションがお金儲けだったりもする...)また、開発や運営に資金がいらないわけでなく

しかしイーサエモンの運営チームは、2019年6月に開発停止の発表をおこなっています。開発停止の主な理由は開発資金が足りなくなったことだということです。ゲームの提供についてはバグの修正も含めて継続している状況です。

とあるように、運営会社も資金ももちろん必要です。

ただし、コンテンツ生成系の技術と組み合わせて、「アルゴリズムでのコンテンツ生成」によりコストを極限まで抑え、それを使った「魅力的なゲーム」を作ることができれば、ゲームの運用費用は非常に安価に抑えられる可能性がありそうです。そんなゲームが楽しいのかはわかりません(ゲームによる)が、特にソーシャル系のゲームの本質を抽象化して煮詰めると、可能性があるのかもしれません。そのときゲームの価値・クリエイティビティは、コンテンツ(アイテム)生成のアルゴリズムと、そのゲームを楽しむコミュニティなのだと思います。

ただ、逆に気持ち悪いなって思っているのが、分散暗号通貨がカジュアルになり、結局すべての活動がお金儲け "x-to-earn" になってしまうというディストピア感です。「GameFi」という言葉からもその可能性は十分ありそうです。大丈夫か。。web3がクリプト(決済、投資)のリブランドであるという主張は、とても的を得ている気がします。

じゃあ、NFTは? デジタル会員証 もしくは 分散サブスク契約 と捉えたい

このあたりのことを調べていたら否が応でもNFTの話題が多く見つかりました。2021年秋からは毎週のように新しいNFTのニュースを見かけましたよね。NFTは、Blockchain+スマートコントラクト を使った、一つのアプリケーションであり、さまざまな「アセット」をNFTのTokenに置き換えることで、安全に取引可能になり、(仮想通貨だけでなく)、メタバースの夢で見た「アセットのInteroperability」が実現できるのではないか? ということで、ユースケースが考案されています。

NFT、主流となる15のユースケースを予想

また、いまのNFTを的確にわかりやすく説明している記事もありました。テック関連のジャーナリストでおなじみの西田宗千佳さんの解説が分かりやすかったです。

NFTの本当の可能性は「8月12日の三河屋のコーラ」にあり

NFTはデジタル会員証(サブスク)、シリアル番号・会員番号がまるで永遠の価値があるように幻想をいただかせているリブランドであり、「NFTの可能性は「アーティストとファンの関係を担保するところ」にある」。余計な幻想は持たずに、デジタル会員証・ファンとアーティストをつなぐ証拠・鍵、くらいに思ってNFTを利用するサービスを考えるのが良さそうです。

また、技術者の視点で、やれることとやれないことを整理されているこの資料も非常に勉強になりました。

さらに、「金融商品」としてホットな「NFTアート」については、高値で取引される1点もののアート作品のアーティストの視点で、「NFTアート」についての批判を整理している記事が良かったです

新しいアートのフォーマット ― ハイブリッド・エディション,ブロックチェーン(NFT)と物理世界

web3に対する期待と批判

概ね理想/理念と、現実とのギャップが「批判」の中心的な論となっていると思います。つまり理想はわかるけど、実際問題そんなにうまくいかないのでは? もしくは価値を産まないのでは? という話。それは、現状の技術的な欠陥だけでなく、既存の価値観含めた法制度や秩序など社会的な問題もあります。web3が金融と同じくGreedの餌食にならず、健全に成長していい感じのエコシステムになることを望むばかりです。

年末話題になっていたジャック・ドーシーのこの主張もこれだと思います。

Twitter創業者ジャック・ドーシーが「Web3.0」に噛みついた理由 界隈で今何が起きているのか

また、この記事もとてもよくまとまっていたと思います。

web3と社会正義の時代

最後に、今後も考察したいこと/私見とまとめ

最後に、調べているなかで妄想したこと・さらに考察したいことをあげます。

「デジタル会員証」は使い所ありそう

  • クラファンでエントリー時点からデジタルでの体験を提供
  • → フィジカルな商品に交換できる権 + 継続的につながり続ける権利
  • NFT=エンゲージメントツール として使えないだろうか

現実世界とのフリクション低減としての保険

  • 2022年、ビジネス的に盛り上がりそう・必要になりそうなのはNFT保険かも?
  • 物理(フィジカル)と仮想(バーチャル)の緩衝材として

インターネットはweb2.0からweb3/メタバースで変わるのか? 重要な技術は?

  • インターネットやwebは、いまや「遊び」だけでなく、「ビジネスのプラットフォーム」になった。メタバースも同じで、いずれはそこに到達するだろう
  • でもその時、「フィジカル」で「本質的なシゴト」はどうなる? Web業界も「虚業」なんて呼ばれたこともあったが
  • となるとメタバースでの活動のカバレッジを広げ、本質的に意味あるものにするためには、PhysicalとDigitalをつなぐアナデジ技術がますます重要・鍵になりそう。デジタルツインなんて言葉もある

プラットフォーム(企業)の役割は変わるのか? なくなるのか?

  • 体験=場(ワールド)とコンテンツ(アイテム)
  • コンテンツを作るのはクリエーター(とアルゴリズム)
  • 場を、より自由にリッチに作れるようになるのが、メタバース(VRだけでなくARも含め)
  • それらを作るための道具と体験するための道具は誰が提供できるか? これが、プラットフォマーの役割になる(ここは、これまでと何も変わっていない)
    • もちろんそれも「分散」でDAO(Decentralized Autonomous Organization)化していくというのはあるとして.. 組織/企業のあり方はまた別途..
    • 分散や流動性・非ロックインの理念とエコシステムは相反しており、企業や組織(web3的にいえば、コミュニティ)に対してのSticknessや差別化要素をどうやって作るか、については妄想するには面白いテーマです。極論では、(社会に価値を生むメカニズムとしては)現在の「企業」の形は残らないということかも? しれません

ユーザーのデータをアセット(Artifact)として価値あるものにする/できるのは誰?

  • ユーザーのデータをアセットとして価値あるものにしたのは、Web2.0/BigData時代ではBigTechをはじめとするサービス提供者だった
  • スマートコントラクトは「取引」に応じて駆動する処理を分散化させる仕組みだったが、データのアセット化も、分散させることはできるのだろうか?
  • ユーザー視点では、さまざまなサービスの利用ログを活用して、また別のさまざまなサービスの体験向上にそれを活用して欲しい
  • データ活用や分析の部分も「スマートコントラクト」と同様に分散的に、ユーザーの手元に集約して実施(立場によって分散と集権が逆なのは面白い)し、その結果をサービス側と共有できる仕組みは作れないだろうか? それはもう一つの、web3に必要な技術/仕組みな気がします


おまけ:調べているなかで、気になったことメモ

Blockchainやビットコインの環境負荷について

Blockchainの理念と一番バッティングしているのでは? と疑問になるのは、ビットコインのマイニングで大量の電気を消費しており、いわゆるいまの社会正義(環境問題)に反しているのではないか、という点ですよね。

Blockchainのスケーラビリティについて

インターネットは「おもちゃ」みたいなものから始まり、「社会インフラ」としてスケールしました。Blockchainはどうか?

  • 仮想通貨のスケーラビリティ問題とその解決法とは?

  • PoW, PoC, PoS, PoIについて. Blockchainの取引を保証する仕組み:ある意味これが、それぞれのBlockchainの根幹の仕組みであり特徴になるので注意。BCHはPoW, ETH2.0やNEMはPoS, XRPはPoCを採用しているようだ
  • PoSはPoWに比べて、計算量を減らしているのだから別のトレードオフがあるはずで、そこは注意が必要で、気づいたらやりたかったことができていなかった、とならないようになるといいが、、少なくとも完全分散とか、民主的みたいな夢には遠く、もう少し螺旋を登る必要がある気がしています。

長文になりましたが、以上です