自分の現在の仕事に関わりそうな興味深いタイトルと、アマゾンでの評判に惹かれて読んでみました。


生産性の高い組織がいったいどんな特性があるのか、特にLeanとかDevOpsという視点が適用できるソフトウェア開発組織において研究した論文を解説するような書籍でした。前半は、研究から得られる、ソフトウェア開発組織における重要な指標や特性についてまとめられており、後半は、それらを導いた「科学的」手法、アプローチ、データ分析方法について解説されています。

私はソフトウェア開発組織におり、主にデータ分析プロジェクトを担当しているので、前半・後半それぞれ違った見方で楽しむことができました。前半の大きな結論は「組織の生産性改善促進効果の高いケイパビリティ」をまとめたものになります。それらはリーダーシップや、リーンな製品開発、さらにテストやデプロイの自動化、、といったなじみのあるキーワードが構造化されており、最終的には、組織全体のパフォーマンスにつながっていました。がここの部分は、だよね、といった感じが多く、(実際やるとなると大変だとは思いますが、頭ではわかっている)だよね、という感じでした。

一方、後半の統計学的な分類や検定といった手法、計量心理学のアプローチ、具体的なデータ収集の方法などは、学びが多かったです。たとえば、パフォーマンス指標自体をある単一の指標ではなく、関連する指標・データからクラスタリングにより作成して用いるなど、読みながら次に試したいアプローチも多々ありました。

また、ソフトウェア開発現場の分析になるので、比較的、実際に計測して定量化できるメトリクスが多そう(例えばコードの行数やコミットやデプロイメントの回数など)なものですが、実際は「アンケート」によるデータ収集をしていたり、またソフトウェア開発組織の中でも、あえて「DevOpsを活用したソフトウェア開発を行っている母集団」に限定(あえて調査対象をむやみに広げない)といったことも、「科学的に」アプローチするための「コツ」ともいえそうです。もちろん、元データを操作して思い通りの結果を導くのは間違えですが、一方で、どんなデータでも使えば使うほど、良い結果が導けるというのも、観測できているデータ自体に限界がある時点で、間違う可能性を秘めているわけで、そのあたりの絶妙なバランスを感じました。

前半の組織ケイパビリティについては非常に整理されており、すぐにでも参考にできる内容ですし、後半の部分の気付きは、なかなかばっしと明文化するのは難しいのですが、ゆえに本書を読んでよかったと思います。